外科的手術をおこなうインプラント治療では、より正確で安全な手術が求められます。ここでは、インプラント治療の精度を上げるためのさまざまな医療機器や治療方法を紹介します。
フラップレス手術は、コンピューターが作成したガイドを用いて歯茎を無切開・無剥離・無縫合でおこなえるインプラント治療方法です。通常のインプラント治療では、コンピューターで埋入位置を確認したのち、医師がフリーハンドで歯茎を切開して埋入手術をします。 しかしインプラントの手術において、埋入する適切な位置・角度・深さは患者によって異なり、正確に埋入できるかどうかで成功率は大きく変わります。
そこでコンピューターが作成したガイドを用いることによって、インプラント手術の精度を上げているのが「フラップレス手術」です。 フラップレス手術ではガイドに従って歯茎に小さな穴を開け、正確な位置・角度・深さにインプラントを埋入することができるため、より成功率を上げるための治療方法として注目を集めています。
CT撮影をもとにコンピューターが作成したガイドに従って手術をおこなうため、より正確な手術がのぞめます。手術はマウスピースのようなガイドテンプレートを歯茎にかぶせておこない、歯茎には小さな穴をあけるだけです。
ガイドを使用しているものの、実際に埋入するのは医師です。フラップレス手術ではガイドによって骨などを直視できず、手術をおこなう医師には豊富な経験とスキルが求められます。また、どのクリニックでもフラップレス手術に対応しているわけではないので、対応可能なクリニックを選ばなければなりません。
平均で34~53万円ほど。ガイド作成費用として4~8万円加算するクリニックが多いようです。
ガイデッドサージェリーとは“ガイドを用いた手術”という意味です。症例によるものの、ガイドテンプレートを用いた手術では歯茎を切開しないフラップレス手術をおこなうことが多いようです。
治療の流れとしてはまず歯科用CTで撮影し、顎骨のかたちや質、インプラントを埋め込む周囲の神経や血管の位置などを把握します。その後CT撮影で得た画像データをもとに、コンピューター上で3D画像を作成。手術のシミュレーションをおこない、インプラントを埋入する位置・角度・深さを決定します。またこのときに、のちに装着する人工歯の形状も考慮します。
治療計画をたてたら、埋入位置や角度・深さを反映させたガイドテンプレートを作成します。手術ではガイドテンプレートを患者の歯茎に装着し、ガイドテンプレートに従ってインプラントを埋入していきます。
フラップレス手術とほぼ同様ですが、コンピューターが作成したガイドテンプレートを歯茎にかぶせて手術をおこなうため、より正確な手術が期待できることがメリットとして挙げられます。
フラップレス手術と同様に、骨などを直視できないため医師の経験やスキルが問われます。また、ガイドを使用して手術を開始したものの、実際の状態がシミュレーションとは異なる場合は通常の切開手術に移行する必要があります。
平均で34~53万円ほど。ガイド作成費用として4~8万円加算するクリニックが多いようです。
サージガイドとは“外科手術用のガイド”という意味であり、インプラント治療で用いられるサージガイドにはさまざまな種類があります。そのなかでもノーベルガイドは多くのクリニックが取り入れている代表的なサージガイド。ノーベルバイオケア社が開発したもので、フラップレス手術(ガイデッドサージェリー)で用いられます。
歯科用CTスキャナーは、今では多くのクリニックが導入している医療機器です。以前のインプラント治療ではレントゲン写真を用いて顎骨の状態を確認していましたが、歯科用CTスキャナーでは3Dの立体的な画像でより正確に顎骨の状態を把握でき、インプラント埋入の精度を高めます。
また歯科用CTスキャナーは顎の骨の形態や神経の位置を把握できるだけでなく、骨密度もある程度の診断もおこなえます。さらに撮影時の被ばく量も少なく、医科用CTの3分の1~5分の1程度。“CT撮影は被ばく量が気になる”という方にも配慮された医療機器といえるでしょう。
インプラント治療にマイクロスコープを用いることで、肉眼では見えにくい微細なものも見えるようになります。たとえば抜歯で残ってしまった微小な歯の欠片や化膿した膿袋などはインプラント埋入後の炎症の原因になります。そこでマイクロスコープで確認することで、埋入前に完全に除去することが可能です。マイクロスコープを導入しているクリニックでは、より正確で安全な手術を期待できるといえるでしょう。
オステルISQは、埋入したインプラントの安定性を数値で測ることのできる医療機器です。
これまでは、埋入後のインプラントがどのくらい安定したかどうかは、医師の勘や経験によって判断するのが通常でした。オステルISQではインプラント体に機器の一部をとりつけ、プローブを近づけて共振周波数をISQ値(インプラント安定指数)として計測します。1~100まで表示可能なISQ値を見て安定性を判断できるため、より正確な診断がおこなえます。また計測時に歯を揺らすなどの衝撃もないため、インプラントや骨に負担を与えることもありません。