インプラント治療を受けたいのに、骨粗しょう症などで”骨が少ない””骨の厚み・高さが足りない”と言われてしまったら、治療を諦めなければならないのでしょうか?
インプラント治療において骨が不足している患者は珍しくなく、その場合はほとんどがまず”骨を増やす”治療からおこなうことになります。骨造成や骨再生、骨移植といった方法で骨を増やし、インプラント埋入のための骨を確保するのです。また、大口式(OAM)インプラントやショートインプラントなど、骨に負担のない方法で骨を増やさずにインプラントを埋入する方法もあります。ここでは、骨が不足している方でもインプラント治療をおこなえる方法を紹介します。
大口式(OAM)インプラントでは、ドリルをほとんど使わずにインプラント埋入をおこないます。
通常の切開手術ではドリルを使用して骨を削りますが、大口式(OAM)インプラントでは細い針などの器具を使用。始めは0.5mmほどの細い針で埋入位置に穴を開け、それからだんだんと太い器具に変えて少しずつ穴を広げます。
骨へのダメージが少なく、必要最小限の切削ですむため骨が柔らかい・骨幅が狭い方でも適用できます。また、骨をドリルで削らないため、“ドリルで削る嫌な音がしない”“痛みや腫れが少ない”ことも挙げられます。
高度な技術や経験を必要とするため、対応できるクリニックは限られています。また、手術時間が長いこともデメリットといえるでしょう。
平均で33~60万円ほど。通常の切開手術に3~10万円ほど加算されることが多いようです。
ショートインプラントとは、通常用いられるインプラント体よりも長さが短いインプラントのことをさします。一般的なインプラントの長さは6~18mmほどですが、ショートインプラントは8mm以下です。通常のインプラントを埋入するには骨が不足している患者でも、骨造成などをおこなわずに埋入できます。
顎骨の幅や厚みが少ない患者でも骨造成をおこなわずに埋入できます。これによって治療期間の短縮・費用の軽減、また身体の負担も少なくなります。
“インプラント体の長さが短くなってしまうと、安定しにくいのでは?”と不安になる方もいるかもしれませんが、問題ありません。インプラント体が骨に安定するために重要なのは長さではなく、3~6ヵ月ほどの治癒期間を経て骨と結合します。ただしショートインプラントが適用できるかどうかは口腔状態や骨の硬さ、噛み合わせなどの条件が整っていなければなりません。また、短く太いインプラントであるため、前歯には使用できないこともデメリットとして挙げられます。
ショートインプラントを用いた治療費は、平均で30~45万円ほどかかるようです。
骨造成・骨再生・ボーンクラフトはインプラント治療をおこなうにあたって十分な骨がない場合に適用される方法です。骨を増やす「骨造成」、骨を再生させる「骨再生」、骨を移植する「ボーンクラフト」などがあり、GBR法・サイナスリフト・ソケットリフト・PRGF・PRPなどがこれにあたります。
いずれの方法も骨が少ない方に有効です。骨の厚みや高さが足りず、そのままではインプラント埋入ができない場合でも、骨造成などをおこなうことによって埋入可能になります。
骨造成などをおこなうことによってインプラント埋入までに時間がかかり、治療期間が長くなることが挙げられます。また、いずれの方法も費用が加算されるため、通常のインプラント治療に比べて治療費は高くなります。
GBR(骨誘導再生療法)は、不足している顎の骨を増やす方法です。骨に十分な厚みや高さがないと、埋入したインプラントが骨からはみ出したり、安定しなくなってしまいます。そこでGBR(骨誘導再生療法)によって骨補填材や自家骨で骨を増やし、インプラントを安定させるだけの十分な骨の厚みや高さを確保します。不足している骨が多い場合はインプラント埋入前にGBR(骨誘導再生療法)をおこない、不足分が少ない場合は埋入と同時におこないます。
骨の厚みや高さが不足している場合でも、GBR(骨誘導再生療法)によってインプラント治療がおこなえるようになります。
GBR(骨誘導再生療法)をおこなうことで、通常のインプラント治療よりも長い治療期間を要します。インプラント埋入前におこなう場合では4~6ヵ月ほど、埋入と同時の場合は埋入後の治癒期間が4ヵ月ほど長くなります。
平均で5~7万円ほど加算され、インプラント治療費は合計で40~57万円ほどかかるようです。
PRGF・PRPとは、組織再生療法のことをさし、自己治癒能力の促進を目的とした方法です。患者自身から採った血に含まれる“骨を再生させる成長因子”を活用するもので、骨が少ない患者に適用されます。方法としては少量の採血(20~40ccほど)をして遠心分離器にかけ、とりだした成長因子を治療部分に戻します。 PRGFは多血小板血漿、PRPは多血小板フィブリンのことをさし、どちらも血小板を含みますが、PRPには白血球も含まれているという違いがあります。このPRGF・PRPをおこなうことによってインプラントと骨が早期に結合できます。
どちらも患者自身の血を用いて治療をおこなうため、骨再生の方法としては安全面において優れた方法です。また、骨組織の成長を促すため、治療期間が40%ほど短縮できるといわれています。
副作用などのリスクは少ないものの、PRGF・PRPが可能なクリニックは多くはないことがデメリットとして挙げられます。
部位によって変わるものの、3~7万円ほど加算されます。インプラント治療の合計は38~57万円ほどです。
上顎の奥歯の部分の上にある、骨の空洞に骨補填材を入れてインプラント埋入のための高さを確保する方法です。サイナスリフトではまず横の歯茎をめくり、上顎洞を露出させます。そこから骨の点在を直接入れて上顎を持ち上げます。同じ目的を持つ方法としてソケットリフトがありますが、ソケットリフトは骨の厚みが5mm以下と非常に骨が少ない場合に適用されます。
インプラント埋入のための骨の高さが5mm以下など、骨が非常に少ない場合でもインプラントを埋入できるようになります。術部を直接みることができるため、より正確に手術を進めることができます。
歯茎を剥離することで身体に負担がかかります。骨補填材を多量に使用しなければならないため費用も高く、治療期間も通常のインプラント治療より約6ヵ月長くなります。
平均で15~18万円ほど加算されることが多いようです。インプラント治療費の合計では50~68万円ほどです。
ソケットリフトはインプラント埋入のための骨の高さが不足しているものの、5mm以上はある場合に適用されます。
方法としては上顎洞ぎりぎりまでドリルを用いて穴を開け、上顎洞下の骨から骨補填材を挿入します。専用器具で上顎洞粘膜を持ち上げ、インプラント埋入スペースを確保して手術は完了です。
歯茎の剥離は必要なく、ドリルもほとんど使用しないため身体へ負担が少ないことが挙げられます。手術時間も短めです。
骨の高さが5mm以上ないと適用できません。また、術部を直接見ることができないため、上顎洞粘膜に穴を開けてしまうことがあり、医師の技術力が求められます。
平均で3~5万円ほど加算されます。インプラント治療費の合計では38~55万円ほどです。