”歯医者に行くのが怖い”という人は多いもの。まして外科的手術をおこなうインプラント治療はもってのほかで、”痛くないインプラント治療の方法はないのだろうか?”と考えている方も多いのではないでしょうか。インプラントは天然歯と見分けがつかないほど美しく、よく噛めるなどの機能性にも優れた治療方法ですが、”歯茎を切開するのが怖い””手術の痛みが不安”、”骨をドリルで削るなんて想像するだけで怖い”と治療を躊躇してしまうこともあるかもしれません。
しかしインプラント治療はどんどん進化しており、「歯茎を切開しない方法」や「骨をドリルで削らない方法」、また「手術の痛みや緊張を和らげる麻酔」など、さまざまな方法があります。ここではインプラント治療が怖い・不安という方のために、精神的な負担を抑えた治療方法を紹介します。
静脈内鎮静法とは、抗不安薬や静脈麻酔薬を静脈内に注射する麻酔です。精神的な緊張や不安、痛みを和らげ、リラックスしてうとうとした状態で手術を受けることができます。麻酔が効いている間も意識がなくなることはなく、呼びかけにも応えられますが、患者によっては健忘効果によって手術の記憶がほとんどない場合もあります。
緊張や不安、痛みを和らげる効果があり、軽眠状態で手術を終えられることは、インプラント治療に恐怖心がある方には大きなメリットといえるでしょう。
手術終了後も1時間ほど麻酔の効果が残るため、車や自転車の運転はできません。そのため、付き添いがいなければ静脈内鎮静法を適用できないこともあります。また、すべてのクリニックで対応できるわけではなく、歯科麻酔科医のいるクリニックでしか対応していません。
平均で5~10万円ほどかかり、インプラント治療費の合計は40~60万円ほどです。
笑気吸入鎮静法では、笑気ガスとよばれる亜鉛華窒素を鼻から吸入します。笑気ガスを吸入している間はぼんやりとして穏やかな気分になりますが、意識ははっきりとしているため呼びかけにもしっかり応えられます。静脈内鎮静法よりもややマイルドな麻酔といえます。
笑気吸入鎮静法では鼻マスクによる鼻からの吸入で効果を得られるため、麻酔注射自体が怖い患者にも優しい麻酔方法です。麻酔の効果は5~10分ほどで切れるため、手術終了後も30分ほど休めば車や自転車の運転が可能です。
効き目がややマイルドな麻酔であるため、不安や緊張が強い患者には適していません。また、笑気ガスを鼻から吸入しなければならないため、鼻づまりや鼻の病気がある方には適用できません。
平均で1万円ほどかかり、インプラント治療費の合計では36~51万円ほどです。
インプラント治療において痛みに不安がある場合、“麻酔注射の痛みも怖い“という方も多いのではないでしょうか。麻酔注射が痛い理由は、針が痛点に刺さることのほかに、麻酔注入の圧力にあります。通常は表面麻酔をしたあとに、手動で麻酔注射をおこなうクリニックがほとんどですが、表面麻酔は針が刺さる痛みは緩和できるものの、注入の圧力までは緩和できません。しかし電動麻酔では麻酔注入の速度と圧力をコントロールできるため、痛みを感じにくくすることができます。
麻酔注射の痛みを感じにくいため、“麻酔注射の痛みすら怖い!という方でもリラックスして治療を開始できます。
電動麻酔を導入しているクリニックは限られていることがデメリットとして挙げられます。
フラップレス手術では、メスによる歯茎の切開や剥離、縫合をせずにインプラント埋入をおこないます。
コンピューターが作成したガイドに従い、歯茎に小さな穴を開けてインプラントを埋入していくため、“治療の痛みが不安”“歯茎を切開するのが怖い”という方にも肉体的・精神的な負担が少ないといえます。
歯茎を無切開・無剥離・無縫合でインプラント埋入をおこなえるため、痛みや出血、腫れが少ないことが挙げられます。また手術時間も短く、骨の状態が良ければ手術後すぐ仮歯を入れられることも、インプラント治療に不安をもっている人にとって大きなメリットといえるでしょう。
手術では作成したガイドテンプレートを歯茎にかぶせるため、骨を直視できません。手術にあたる医師の経験やスキルが必要であり、フラップレス手術に対応できるクリニックは限られています。また、顎骨の状態が良好でなければ適用できません。
平均で34~53万円ほど。ガイド作成費用として4~8万円加算するクリニックが多いようです。
大口式(OAM)インプラントは“ドリルを使わない治療方法”として多くの歯科医師の注目を集めています。
通常の切開手術では歯茎を切開したあと、ドリルを用いてインプラント埋入のための穴を開けます。骨をドリルで削ると振動や大きな音を感じ、“ドリルの音や振動が怖い”という患者も多いといいます。 大口式(OAM)インプラントではほとんどドリルを使わず、0.5mmほどの細い針で歯茎にごく小さな穴を開けます。その後徐々に器具を太くしていき、最終的に16~20種類の器具を用いてインプラント埋入をおこないます。
大口式(OAM)インプラントは、ドリルによる振動や不快な音を感じないうえ、痛みや出血、腫れが少ない身体的にも精神的にも優しい治療方法です。
ドリルを使わずに細い針などを使用し、だんだんと穴を広げて埋入穴をつくるため、ドリルによる振動や不快音を感じません。また、痛みや出血、腫れも少ない治療方法であり、骨に負担がかかりにくいため、身体の負担も少ないことが挙げられます。
手術をおこなう医師には豊富な経験とスキルが求められます。そのため、大口式(OAM)インプラントに対応しているクリニックはあまり多くありません。また、手術時間が長いこともデメリットとして挙げられます。
平均で33~60万円ほど。通常の切開手術に3~10万円ほど加算されることが多いようです。
抜歯即時は抜歯と同時にインプラント埋入をおこなう治療方法です。
通常ではインプラント治療をおこなうとき、抜歯が必要な場合は抜歯後2~3ヵ月の期間をおいてインプラント埋入をおこなっていました。抜歯即時では1日で抜歯と埋入が終えられ、顎骨の状態がよければすぐに仮歯を装着できます。これによって「手術回数を減らせる」「骨の状態によっては歯がない期間がなくてすむ」「全体的な治療期間を大幅に減らせる」というメリットがあります。
インプラント治療を検討している方にとって、治療は“安全性を確保しながら、できるだけ早く終えたい“というのが本音ではないでしょうか。抜歯即時はそういった希望をもつ方にもメリットの大きい治療方法といえるでしょう。
抜歯と同時にインプラント埋入をおこなえるため、手術回数を減らせることがメリットとして挙げられます。抜歯から埋入までの期間が必要ないため、治療期間も短縮できます。“1日でも早くインプラント治療を終えたい”という方にとって大きなメリットといえるでしょう。
抜歯即時は顎骨の状態が良好でなければならず、骨が足りない・骨が柔らかいなどの場合は適用できません。
平均32~58万円ほど。通常の手術より2~8万円ほど加算されることが多いようです。
抜歯即時荷重は抜歯即時同様、抜歯と同時にインプラント埋入をおこなう治療方法です。抜歯即時荷重は抜歯・埋入・仮歯装着を同時におこなうため、“歯がない”期間がありません。
抜歯即時同様、治療期間や手術回数の短縮が挙げられます。歯がない期間がないためすぐに食事や会話ができ、審美的にも機能的にも大きなメリットがある治療方法です。
顎骨の状態が良くなければ適用できないことがデメリットとして挙げられます。
抜歯即時同様、平均32~58万円ほど。通常の手術より2~8万円ほど加算されることが多いようです。
歯科医療ではレーザーを用いた治療を採用しているクリニックも多く、炭酸ガスレーザーやエルビウムヤグレーザーなどが導入されています。なかでもエルビウムヤグレーザーは“唯一歯を削ることができるレーザー”として注目を集めており、水を併用しながら照射するため痛みを感じにくい特徴があります。また、メスでの切開に比べて傷の治りも早く、レーザーによる切開は精神的にも肉体的にも負担の少ない治療方法といえるでしょう。ただし、切開する時間は多少長くなってしまうデメリットもあります。